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東京地方裁判所 平成8年(行ウ)110号 判決

原告

ビクターエンタテインメント株式会社(X)

右代表者代表取締役

富塚勇

右訴訟代理人弁護士

三木祥男

被告

東京都渋谷都税事務所長(Y) 大竹貫一

右指定代理人

江原勲

松田英智

鈴木朗

主文

一  被告が原告に対し平成六年九月二〇日付けでした原告の別紙物件目録記載の土地に対する平成六年度分の特別土地保有税の納税義務を免除しない旨の決定を取り消す。

二  訴訟費用は、被告の負担とする。

事実及び理由

第一  原告の請求

主文同旨

第二  事案の概要

本件は、自社ビル建設のため土地を保有していた原告が被告に対し、右土地に対する特別土地保有税について地方税法(以下「法」という。)六〇三条の二第一項に規定する納税義務の免除の認定を申請したところ、被告が免除要件に該当しないとして納税義務の免除を認めなかったため、原告がこれを不服として、その処分の取消しを求めている事案である。

一  関係法令の規定内容等

1  特別土地保有税の納税義務免除制度

(一) 特別土地保有税は、土地又はその取得に対し、当該土地所在の市町村において、当該土地の所有者又は取得者に課する地方税であるが(法五八五条一項。なお、東京都の特別区の存する区域においては、法七三四条一項により、特別土地保有税は、東京都が課するものとされ、この場合においては、東京都を市とみなして法第三章第八節の特別土地保有税に関する規定が準用される。また、東京都においては、法三条の二、東京都都税条例四条の三第一項に基づき、徴収金の賦課徴収に関する事項は、一定の事項を除き、知事から都税の納税地所管の都税事務所長又は支庁長に委任されている。)、市町村は、土地の所有者等が所有する土地が次に掲げる土地のいずれかに該当し、かつ、当該土地の利用が当該市町村に係る土地利用基本計画、都市計画その他の土地利用に関する計画に照らし、当該土地を含む周辺の地域における計画的な土地利用に適合するものであることについて市町村長が認定した場合には、当該土地に係る特別土地保有税の納税義務を免除するものとされている(法六〇三条の二第一項)。

(1) 事務所、店舖その他の建物又は構築物で、その構造、利用状況等が恒久的な利用に供される建物又は構築物に係る基準として政令で定める基準に適合するものの敷地の用に供する土地(次の(2)に該当するものを除く。同項一号)

(2) 工場施設、競技場施設その他の施設(建物、構築物その他の工作物及びこれらと一体的に利用されている土地により構成されているものに限る。以下「特定施設」という。)で、その整備状況、和用状況等が恒久的な利用に供される特定施設に係る基準として政令で定める基準に適合するものの用に供する土地(同項二号)

(二)そして、右のうち、恒久的な利用に供される建物又は構築物に係る基準は、地方税法施行令(以下「施行令」という。)五四条の四七第一項により、次のとおり定められている。

(1) その構造及び工法からみて仮設のものでないこと。

(2) その利用が相当の期間にわたると認められること。

2  免除認定の基準日

(一) 右の納税義務免除の要件に該当するか否かの判定は、土地に対して課する特別土地保有税(保有分)にあっては右税を申告納付すべき日の属する年の一月一日、土地の取得に対して課する特別土地保有税(取得分)にあっては右税を申告納付すべき日の属する年の一月一日又は七月一日(これらの日前に当該土地が他の者に譲渡されている場合には、当該譲渡の日)の現況によるものとされている(法六〇三条の二第七項、五八六条四項)。

(二) 免除認定の基準日に関しては昭和五三年四月一日付け自治固第三八号自治省税務局長通達「恒久的な建物、施設等の用に供する土地に係る特別土地保有税の納税義務の免除の取扱いについて」(以下「局長通達」という。)は、「基準日現在の一時的な現況のみによって免除の認定をすべきものではなく、当該基準日を中心とする一定の期間における土地の利用状況を勘案して行うべきものである。したがって、基準日現在において既に建設に着手されており、かつ、その後の工事の進捗状況からみて恒久的な建物、施設等の用に供されることが確実であると認められる土地は、免除対象として差し支えないものである。」としている(局長通達第二の五)。

二  争いのない事実等

(証拠により認定した事実は、かっこ内に証拠を掲記した。)

1  原告は、平成二年九月一九日、自社ビル建設の目的で別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を取得し、引き続きこれを保有していたが、右の建設に着手するまでの間、本件土地に隣接する原告のスタジオ利用者用の駐車場としてこれを使用し、本件土地に対する特別土地保有税については、法六〇三条の二第一項二号の特定施設として納税義務の免除を受けていた。

2  原告は、自社ビル建設という当初の計画を実行するため、平成五年九月一日、鹿島建設株式会社に対し、本件土地上に鉄筋コンクリート造地上六階建地下二階建、建築面積三一五・〇〇平方メートル、延べ面積二四五二・四七平方メートルの建物(以下「本件建物」という。)を建築する工事を発注するとともに(〔証拠略〕)、同月一三日、本件建物の建築について建築確認の申請を行い、同年一一月二九日、右建築確認を得た。

3  原告は、平成六年五月二六日、被告に対し、本件土地及び原告が渋谷区内に所有する他の二筆の土地に対する平成六年度分の特別土地保有税の申告書を提出するとともに(弁論の全趣旨)、本件土地について、免除認定の基準日である同年一月一日現在、既に本件建物の建築工事に着手していたので、本件土地は法六〇三条の二第一項一号の土地に該当するとして、本件土地に対する特別土地保有税八一〇四万四〇〇〇円について納税義務の免除の申請(以下「本件免除申請」という。)をした。

4  被告は、東京都特別土地保有税審議会の議を経て(弁論の全趣旨)、平成六年九月二〇日、原告に対し、本件土地については法六〇三条の二第一項(東京都都税条例一五三条の二第一項)の要件に該当しないとして、原告の本件土地に対する平成六年度分の特別土地保有税の納税義務を免除しない旨の決定(以下「本件否認処分」という。)をした。

5  原告は、平成六年一一月一四日、本件否認処分を不服として、東京都知事に対し、審査請求をしたが、同知事は、平成八年三月二二日付けで、右審査請求を棄却する裁決をした。

三  争点及び争点に関する当事者の主張

本件の争点は、本件土地が免除認定の基準日である平成六年一月一日現在において、法六〇三条の二第一項一号に規定する恒久的な利用に供される建物又は構築物の敷地の用に供する土地と認められるか否かであり、この点に関する当事者の主張は次のとおりである。

1  原告の主張

(一) 特別土地保有税は、投機的な土地取引を抑制し、宅地の供給を促進するという土地政策を税制面から補完するものとして創設された地方税である。そして、右課税制度の趣旨に照らし、社会通念上恒久的な利用に供される建物等の敷地の用に供される土地については、右税を負担させることは適当でないとの考慮から、法はその六〇三条の二において、納税義務免除の制度を定めているものである。

右納税義務免除の認定に当たっては、法六〇三条の二第七項、五八六条四項に従い、基準日現在の事実に基づいてその認定を行うべきであるが、基準日前後における事実であっても、それが基準日現在の事実を推認させる補助的事実であれば、これを斟酌することができるし、また、斟酌することを必要とするものである。

(二) 原告は、平成二年九月一九日自社ビル建設の目的で本件土地を取得し、その建設着手まで本件土地を駐車場として使用し、法六〇三条の二第一項二号の特定施設として特別土地保有税の納税義務の免除を受けていたが、当初の計画を実行するため、平成五年九月一日、鹿島建設に本件建物の新築工事を発注した。

鹿島建設は、同年一一月二九日、本件土地において建築工事に着手し、同年一二月中に、現場事務所を建設し、本件土地に囲いの鉄板の塀及び建設資材搬入車両用の出入り口を設置し、現場事務所と塀に建築基準法八九条による建築確認済みの表示をした。また、鹿島建設は、同月中に、本件土地に水銀灯を設置し、四〇ミリの大口径のパイプで給排水の引込み工事をし、クレーン、杭打機、掘削機等の建設機械を搬入し、仮設トイレを設置し、動力線の引込みを完了していたのみならず、本件における山留め工事の工法であるSMW工法によるドリル打設のため、あらかじめ、ドリル打設の際にコンクリートミルクがあふれ出すのを防ぐため幅一・五メートル、深さ一メートルの溝を長さ約一〇メートル掘削し定規材の敷込みを開始していた。

そして、平成六年一月七日には、SMW工法による最初のドリル坑が打設され、SMW工法によるコンクリートミルク拡散防止用のシートが張られ、その後、工程表に記載された予定どおりに工事は着実に進捗し、平成七年四月二〇日、本件建物は竣工した。

(三) 右事実によれば、基準日現在において、本件土地において建築確認済みの表示がされていた建物が建築途上にあることは、客観的、外形的にみて明らかであり、本件土地は、基準日現在において、恒久的な建物の敷地として社会通念上相当程度の利用がされていたものとして、法六〇三条の二第一項一号に規定する免除対象の土地に該当するというべきである。

(四) したがって、本件否認処分は、本来、納税義務の免除を認めるべきものについてこれを認めなかったものであり、違法な処分というべきである。

2被告の主張

(一) 法六〇三条の二に規定する納税義務の免除の適用を受けるためには、原則として、基準日現在において、当該土地が現実に恒久的な建物、施設等の用に供されていることを要するものであるが、基準日において、既に恒久的な建物、構築物の建設に着手されており、かつ、その後の工事の進捗状況からみて恒久的な建物、構築物の敷地の用に供されることが確実であると認められる土地については、右納税義務免除の対象となり得るものである。

しかし、納税義務の免除の適用を受けるためには、基準日において、当該土地の建設工事が一定程度進行し、予定建築物が建設されることが明らかとなり、当該土地をもはやそれ以外の用途に供することがないと判断されるような状況に達していることが必要であり、本件で施行された連続地中壁工事を伴う建築物についていえば、基準日現在において、当該山留め壁の全部又は一部が完成していることが必要と解される。

(二) 基準日である平成六年一月一日における本件土地の状況は、本件土地の周囲に囲いを巡らせ、建設資材搬入車両用の出入り口を設置し、北側公道に面した囲い板には、建築基準法八九条による建築確認済みの表示がされ、クレーン、杭打機、掘削機等の建設機械が搬入されるなど本件建物建設のための準備と思われる作業は進行していたものの、山留め壁の全部又は一部が完成していると認められる状況にはなかった。

(三) したがって、本件土地は、基準日現在において、既に恒久的な建物、構築物の建設に着手されており、かつ、その後の工事の進捗状況からみて恒久的な建物、構築物の敷地の用に供されることが確実であると認められる土地であるとはいえなかったのであるから、本件土地に対する平成六年度分の特別土地保有税の納税義務の免除を認めなかった本件否認処分は適法な処分である。

第三  当裁判所の判断

一  納税義務免除制度等について

1  特別土地保有税は、土地の取得及び保有に伴う費用を増大させることにより、土地の投機的取引を抑制し、地価の安定を図るとともに、土地の供給を促進することを目的として、創設されたものであるが、投機目的で取得され、保有されている土地であるか否かの判断が困難であることなどから、当初は、当該土地の利用の有無を問わず一律に課税されていたものである。しかし、その後、既に社会通念上相当程度の利用がされ、最終的な需要に供されていると認められるような土地についてまで、特別土地保有税を課するのは、同税の性格からみて適当でないという考慮から、昭和五三年度の税制改正において、その課税の合理化を図るための措置として法六〇三条の二に規定する納税義務免除制度が設けられたものである。そして、右の納税義務免除制度が設けられた経緯によれば、未利用の土地はもとより、将来の売買を見越して仮の利用に供されているにすぎない土地については、納税義務免除の対象とすべきでないことになるが、具体的な土地について、それが最終的な需要に供されているものであるか、将来の売買を見越して仮の利用に供されているにすぎないものであるかの認定は、相当に困難を伴うものであるから、その具体的運用における不公平を避けるため、法は、前記第二の一記載のとおり、外形的、客観的な基準を導入し、社会通念上相当程度の利用がされていることが明確である土地のみを免除の対象とすることとしたものである。

2  【要旨一】したがって、当該土地が法六〇三条の二第一号の免除対象の土地に該当するか否かは、同号、同条七項、五八六条四項の規定に従い、基準日現在における当該土地の現況により客観的に判断すべきものである。しかし、右のような納税義務免除制度の趣旨に照らし、かつ、法六〇三条の二第一項一号は「……の敷地の用に供する土地」と規定し、「……の敷地の用に供している土地」とは規定していないのであって、その規定の文言上は、基準日現在において当該土地上に恒久的な利用に供される建物又は構築物が現存することが納税義務免除の絶対的な要件になっているとは解することができないことを考えると、基準日現在において、当該土地上に同号の基準に適合する建物又は構築物が現存しない場合であっても、基準日現在において既に右基準に適合する恒久的な建物又は構築物の建築工事の着手があり、かつ、その後の工事の進捗状況からみて、当該土地が右建物又は構築物の敷地の用に供されることが確実であると認められる土地は、同号の免除対象の土地に該当すると解するのが相当である(前記第二の一2(二)記載の局長通達は、右と同旨をいうものと解される。)。

3  この点に関し、被告は、納税義務の免除の適用を受けるためには、基準日において、当該土地の建設工事が一定程度進行し、予定建築物が建設されることが明らかとなり、当該土地をもはやそれ以外の用途に供することがないと判断されるような状況に達していることが必要である旨主張する。

しかしながら、前記の納税義務免除制度の趣旨に照らせば、基準月現在において法六〇三条の二第一項一号の基準に適合する恒久的な建物又は構築物の建築工事の着手があり、かつ、その後の工事の進捗状況からみて右建物又は構築物の敷地の用に供されることが確実であると認められる土地については、基準日現在における工事の進捗の程度が当該土地を右建物又は構築物の敷地以外の用途に供することができないと判断されるような状況に達していない場合であってもき納税義務免除の対象とするのが相当であり、また、そのように解したとしても、同項が納税義務免除の対象となる土地について外形的、客観的基準を導入した趣旨に反するものということはできない。

したがって、被告の前記主張は採用することができない。

二  本件土地の免除要件該当性について

1(一)  原告が平成二年九月一九日、自社ビル建設の目的で本件土地を取得したこと、原告が自社ビル建設に着手するまでの間、本件土地を駐車場として使用し、特定施設として本件土地に対する特別土地保有税の納税義務の免除を受けていたこと、原告が自社ビル建設という当初の計画を実行するため平成五年九月一日、鹿島建設に対し、本件土地上に鉄筋コンクリート造地上六階建地下二階建、建築面積三一五・〇〇平方メートル、延べ面積二四五二・四七平方メートルの本件建物を建築する工事を発注したこと、原告が同月一三日、本件建物の建築確認を申請し、同年一一月二九日右建築確認を得たことは、前記第二の二記載のとおりである。

(二)  本件土地における工事の進捗状況に関しては、免除認定の基準日である平成六年一月一日現在において、本件土地の周囲に囲いがされ、建設資材搬入車両用の出入り口が設置され、北側公道に面する囲い板には、建築基準法八九条による建築確認済みの表示がされ、クレーン、杭打機、掘削機等の建設機械が搬入されていたことは、当事者間に争いがなく、さらに、〔証拠略〕によれば、次の事実が認められる。

(1) 鹿島建設は、本件建物の建築確認を得た平成五年一一月二九日、本件土地上において起工式を行って工事に着手し、同年一二月二〇日までに、鉄板の仮囲いの組立て、地表面のすきとり、地中障害物の撤去、整地、給排水の引込み等の仮設工事を行ったこと(なお、給水の引込みに当たっては、本件建物の給水の配管が口径四〇ミリメートルで設計されていたため、通常、仮設の引込みで使用される口径一二ミリメートル程度のパイプではなく、当初から口径四〇ミリメートルのパイプにより引込みが行われた。)。

(2) 本件建物は地下二階まであり、地下工事のため地表面から約一一メートル地盤を掘削するすることとなっており、右地盤の掘削に当たっては、地盤が掘削側に崩落しようとする力を支えるための山留め工事が必要であるが、その山留め工事には、地下の深い建物の工事に使用されるSMW工法が採用されたこと。

SMW工法は、杭打機に取り付けたドリルによって、建物の周囲の地盤に穴を開けながら、同時にそのドリルの先端から液状のセメントミルクを放出し、放出したセメントミルクで建物の外周の地下部分に掘削時の外からの土圧を支えるための壁を作り、さらにこの壁を補強するため芯となる鉄骨を同時に入れ込んでいく工法であり、右工法においては、多量のセメントミルクを地中に放出するので、セメントミルクがあふれて近隣に流れ出さないようにするため、ドリルによる削孔に先立ち、削孔部分の地表を掘削して、通常、幅約一・五メートル、深さ約一メートル程度の溝を掘り、同時にドリルを打ち込む際のガイドになる定規材という鉄骨を敷き込む作業が行われること。

(3) 鹿島建設は、平成五年一二月二一日から、SMW工法による山留め工事に着手し、同月中に、ドリルによる削孔に先立って掘削する溝を長さ約一〇メートル程度掘削し、定規材の敷込みを行ったが、同月中にドリルによる削孔を行うまでには至らず、第一回目のドリルによる削孔は、年末年始の休暇後、平成六年一月七日に行われたこと。

(4) 鹿島建設が平成五年一一月二九日に工事を開始した後、同年中に行った工事の出来高は、全体の工事量の二パーセント程度であったこと。

(5) 平成六年一月以後、約一〇メートルずつ前記溝掘り、定規材の敷込みをしてドリルで削孔等を行うという手順により、SMW工法による山留め工事が本格的に行われ、その工事が同年四月初めころ完了し、同年四月には、第一次掘削工事が行われ、その後地下く体工事の型枠工事及び鉄筋工事も開始され、同月末までの工事の累計出来高は全工事量の一四・五パーセントに達していたこと。

(6) その後、工事は概ね工程表どおりに進行し、原告が本件免除申請をした平成六年五月二六日の時点では、地下く体工事の鉄筋工事及びコンクリート工事等が進行中であり、さらに、本件否認処分がされた同年九月二〇日の時点では本件建物のく体工事が概ね半分以上終了し、このようにして当初予定していた工期である平成七年四月末日よりも若干早く同月二〇日に本件建物が竣工したこと。

2(一)  本件建物は、鉄筋コンクリート造地上六階建地下二階建の建物で、原告が自社ビルとして建設したものであるから、本件建物が、法六〇三条の二第一項一号の規定を受けて恒久的な利用に供される建物又は構築物に係る基準を定めた施行令五四条の四七第一項の「その構造及び工法からみて仮設のものでないこと」(同項一号)及び「その利用が相当の期間にわたると認められること」(同項二号)という基準に適合する建物であることは明らかである。

(二)  そして、右1(一)、(二)の事実によれば、鹿島建設は、平成五年一二月までに仮設工事を行い、山留め工事に着手していたのであるから、客観的、外形的にみて、基準日である平成六年一月一日現在において、既に本件建物の建築工事の着手があったと認めることができ、加えて、その後平成六年四月初めころ山留め工事は完了し、引き続いて工事は工程表どおり継続的に行われ、原告が本件免除申請をした同年五月二六日の時点では、既に地下く体工事の鉄筋工事及びコンクリート工事等が進行中で、本件否認処分がされた同年九月二〇日の時点では、本件建物の地上階のく体工事が概ね半分以上終了していたのであり、右のようなその後の工事の進捗状況をも勘案すれば、右基準日現在において、本件土地が本件建物の敷地の用に供されることは確実であるとみるべき状況にあったと認めるのが相当である。

3  したがって、本件土地は、基準日現在において既に法六〇三条の二第一項一号の基準に適合する恒久的な建物の建築工事の着手があり、かつ、その後の工事の進捗状況からみて右建物の敷地の用に供されることが確実であるとみるべき土地として、同号の納税義務免除対象の土地に該当するというべきであるから、本件土地が右納税義務免除対象の土地に該当しないことを理由としてされた本件否認処分は、被告が同号の要件該当性についての判断を誤って行ったものであり、違法というべきである(なお、法六〇三条の二第一項の規定により納税義務の免除を受けるためには、同項一号又は二号に規定する納税義務免除対象の土地に該当するだけではなく、同項に規定する土地利用計画適合性の要件も充足しなければならないが、被告が本件否認処分をするに当たっては、右の土地利用計画適合性の要件については特に問題とせず、専ら本件土地が右の納税義務免除対象の土地に該当しないことを理由として本件否認処分を行ったことは、弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。)。

三  結論

よって、原告の請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 青栁馨 裁判官 増田稔 篠田賢治)

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